患者さんの命に関わる地方の方言問題

医療従事者が患者さんの言葉を理解できない、そのために適切な治療が行えない、そんなウソのような話が実際にあるのをご存知でしょうか。
東日本大震災後、青森県の病院では患者さんの言葉を医者が理解できない、という事態が起こり、青森県はこの事実を実感しました。
青森県には大きく分けて南部弁、津軽弁という2種類の方言があります。
これらには全く違う単語やイントネーションが存在し、同じ県内でも地域によっては相手が何を言っているかが全くわからない事があります。
同じ地域に住んでいたとしても、若者と老人との間でも、知っている言葉や使っている言葉は違うでしょう。
けれども、これは青森県に限った話ではありません。
病院に勤めている医者や看護師は、その地域出身とは限らないからです。
そしてこの事実が、医療現場では大きな問題となります。
東日本大震災のような一分一秒を争う大怪我を負った時、あるいは日常的な通院などでも、患者さんの症状、つまり言葉が理解できないために、患者さんが命を落とす危険性があるのです。
この事実に対応すべく、青森県にある弘前大学医学部では、方言の勉強を行っています。
青森県の津軽地方で主に使われる、津軽弁という方言です。
例えば、「シビリグ(=手足がしびれる)」「シモル(=しみる)」など医療に関係する言葉から、「シダリバジ(=左利き)」「ケ(=食べろ)」など、日常で使われる言葉まで、数多くの津軽弁が資料となる冊子に載っています。
地元の方言を理解する、ということは、医療従事者にとってはとても重要な事です。
地方への勤務を考える医療従事者は、医療に関することだけでなく患者さんと意思疎通を図るためにあらゆる勉強をしなくてはいけません。